1月6日
人間史としての工学 :「各論」
志村努
宇都宮大学 客員教授
東京大学 名誉教授
東京大学 名誉教授
最先端物理の工学応用 :量子力学が無ければ、スマホも自動車も湯沸かし器も動かない
量子力学はどのように半導体産業を生み出したか
応用物理学とは、最先端の物理学の研究成果を工学や技術へとつなげる学問である。その代表的な例が、100年前に始まった量子力学と、それに基づく半導体産業の発展である。
量子力学は、原子や電子といったミクロな世界の振る舞いを解き明かす学問であり、その理論は人間の直感とはかけ離れている。しかし一見突飛に見えるこれらの理論は、古典物理学では説明できなかった多くの不可解な現象を見事に解明した。
さらに、量子力学と統計力学の発展により「固体物理学」という新たな分野が誕生し、その中で明らかになった電子の振る舞いを応用することで、半導体技術が生まれた。この技術は、20世紀後半にトランジスタや半導体集積回路、論理回路、マイクロコンピュータ、メモリといった革新的な製品を次々に生み出し、やがて巨大な産業へと成長した。現在では、日常生活のあらゆる製品にマイクロプロセッサーをはじめとする半導体デバイスが組み込まれている。
もちろん、量子力学を築いた初期の物理学者たちは、産業への応用や経済的利益を目的としていたわけではなく、純粋に自然の仕組みを解き明かそうとする学問的探究心からこの分野を切り開いたのである。
しかし、基礎科学によって自然界の理解が深まることで、新たな機能を持つ素子や製品が生まれ、それが社会や産業に大きな影響を与えることがある。
応用物理学とは、最先端の物理学の研究成果を工学や技術へとつなげる学問である。その代表的な例が、100年前に始まった量子力学と、それに基づく半導体産業の発展である。
量子力学は、原子や電子といったミクロな世界の振る舞いを解き明かす学問であり、その理論は人間の直感とはかけ離れている。しかし一見突飛に見えるこれらの理論は、古典物理学では説明できなかった多くの不可解な現象を見事に解明した。
さらに、量子力学と統計力学の発展により「固体物理学」という新たな分野が誕生し、その中で明らかになった電子の振る舞いを応用することで、半導体技術が生まれた。この技術は、20世紀後半にトランジスタや半導体集積回路、論理回路、マイクロコンピュータ、メモリといった革新的な製品を次々に生み出し、やがて巨大な産業へと成長した。現在では、日常生活のあらゆる製品にマイクロプロセッサーをはじめとする半導体デバイスが組み込まれている。
もちろん、量子力学を築いた初期の物理学者たちは、産業への応用や経済的利益を目的としていたわけではなく、純粋に自然の仕組みを解き明かそうとする学問的探究心からこの分野を切り開いたのである。
しかし、基礎科学によって自然界の理解が深まることで、新たな機能を持つ素子や製品が生まれ、それが社会や産業に大きな影響を与えることがある。